Story
Princess Legができるまで

 私の家は女系の家系である。
元々の家族構成は女性4:男性1の3世代の5人家族。親族にも女性が多く、そして強い。また、下町ということもあり近所に住む女性もチャキチャキした女性が多い。女性が中心になって家を支えていると感じる家庭を多く見てきた。しかし、女性が強く家でも外でも何でも率なく物事をこなす中、何故男性を立てなくてはいけないのか?物心ついた頃は、家庭しか見えなかったのでとにかく不思議でしょうがなく、母からの教えも「男を立てる」というものに従ったものだった。表面的には男を立てているが、女性たちの中には本当はやりたい事がしたい(例えば仕事など)という希望を押し殺した上で世間体を優先した行動が多かったからである。

父と母の関係と同様に親と子の関係も上下が絶対的に覆せないと思い込む教育がされてきたと実感する。ある時それは何気ない会話で現れた。母がたまに言う「子どもが入ってくるな。」という言葉だった。私はそれが嫌で漠然と成長すれば自由になれると思い込んでいた。
私の母は強く賢い。そして一番尊敬できる存在であるが、真面目が故、家庭が自営業だったこともあり世間体を大切にしていると感じる。ただ、その思いが強すぎるが故に家族が世間体の枠からはみ出すと、その枠の中に強制的に引き戻すことが多々ある。彼女はそれが世間から模範になる理想の家庭と思っての行動だと感じる。ある時「子どもが入ってくるな。」という言葉を引き金に私は娘として育てられているが、人としては育てられていない。と感じ、親の目を盗みながら今でも母の敷く「世間体」から飛び出す機会を伺っている。

そして私の人生も様々な素敵な女性に囲まれて育ってきた。高校時代からクラスの半数以上が女性で、初めて働いた会社も全員女性と、そんな場に身を置くことが多かった。歳が近い女性たちの悩みを聞くのも、共感しあえる話題を持つこともとても楽しかった。彼女たちと情報の交換をしたく様々な情報を集めることが習慣になっていた。
大学では、今まで会うことの無かった様々な経験をした素敵な女性と多く知り合った。一流企業で働いている方、経営者の方、子育て中のママさんまで様々な境遇の女性たちと共に作業をすること、お昼を食べたりしながら、彼女たちがどうして美術の大学に通い始めたのかバックグラウンドを聞くことがとても楽しかった。
特に家庭の事情や結婚に子育て仕事など様々な優先事項があり、憧れていた芸術に触れる機会を長い事諦めていた人が多くいる事を知った。素晴らしい家庭を持っていても、他人の幸せを願い自身のやりたい事を出来なかったフラストレーションを抱えていた方や、今それが出来てすごく楽しいという方も多くいた。
家庭や仕事・そして自ら学ぶ事まで行う彼女たちのパワーをとても尊敬している。彼女たちのバイタリティーとハングリーさは計りしれない魅力を感じた。
そんな彼女たちと楽しく、いいねと共感しながら一緒にモノづくりがしたいと強く思う事が多くあった。

また、現役で大学に通う子たちの話を聞くと、どうしてこの道に進んだのかと尋ねると「親がここの偏差値が一番良いからこの学校・学部にした」という話をよく耳にした。周りには自ら道を選んで進む子が多かったので(この環境がすごく恵まれていた事に最近になって気がついた。)この子たちが自分のやりたい事を見つけるためにはどうしたらいいのだろうか?と考えることも多くなった。

女性の良いところは、ワガママで同性で結託すると強力なパワーを持っている事だと感じる。どうせなら欲しいものを全て手に入れて幸せになれるなら彼女たちはもっと輝けるのではないかと感じた。なので女性といいね。と言いながら楽しく作業したいと願っていた。